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前回の「電子メール運用の考察要素」では、取引関連の電子メールの保存期間は電帳法の規定に則り7年間としていますが、この点についてもう少し掘り下げたいと思います。
各種法令で保存義務のある書類の保存期間は、最長で労働安全衛生関連の記録が30年間という長期のものがありますが、電子メールでやりとりする可能性が高いものは、電帳法関連の取引情報が最長と考えられます。これら取引情報の保存期間は7年間ですが、起算日は「書類作成日・受領日の属する事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日」とされています。
従いまして、事業年度終了の日の翌日に作成又は受領した電子メールは、厳密には1年と2ヶ月加算され8年と2ヶ月間保存する必要があります。また、平成28年度の税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年とされていますので、その場合保存期間も10年間になり、最長で作成または受領した日から11年と2ヶ月間の保存が必要になります。しかし、モデル規程では、欠損金の繰越しは無いという前提で、保存期間を起算日から7年間としています。
なお、取引関連以外の電子メールについては、法定保存期間があっても3年間から5年間ですので、既存の文書管理規程に準じて保存期間を設定するのが望ましいとしています。
一般的に、何らかの事実を証明するには、5W1Hを明らかにすることが重要とされています。
すなわち、いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)したかを明らかにすることが必要となります。電子メールによって何かを証明しようとする場合でも同様で、その電子メールが作成された背景情報もあわせて示すことが重要と考えられます。
電子メールをポツンと単独で提示しても信頼性が低く、その電子メールがどのような経緯で、何のために、誰が、いつ、どのようにして作成したかなどを明らかにすることにより、より信頼性が高められると考えられています。
従いまして、電子メールの場合、以下の3点セットで保存することが重要となります。
特にヘッダー情報は、コンテキスト(プロファイルとも言われる作成背景情報で、文書作成経緯、作成時期、作成者、配布先等の情報)として、信頼性確保のために有効な情報になります。
なお、添付ファイルにPWがかかっている場合は、後々PWが解除できなくなる可能性もありますので、PWを外して閲覧可能な状態で保存することを推奨します。
一般的に電子メールの保存は、利用者のPC端末内で行われるケースが多いと思われますが、電子メールを企業の業務記録と位置付けるのであれば、保存用のファイルサーバ等で一括管理することが求められます。
さらに、電子メールの電子文書としての性質から、その信頼性を確保して保存するために重要な要件として、民訴法の項目で説明しました「真正性」の他に「完全性」の担保が挙げられます。「完全性」とは、当該電子文書が虚偽入力、書換え(改ざん・すり替え)、消去、破壊等されていない性質のことをいいますので、文書情報管理システム等でシステム的にアクセス制御やログ管理をすることで、「完全性」を担保することが可能です。
従いまして、電子メールの場合は専用のアーカイブシステムも一般に提供されていますので、文書情報管理システムや電子メールアーカイブシステム等を利用して、長期間安全に保存・管理することが望ましいといえます。
電帳法の要件に則って保存する必要があります。前述の通り、電子メールの授受後遅延なくタイムスタンプを付与するか、正当な理由が無い訂正および削除の防止に関する事務処理の規程を定め当該規程に沿って運用をおこなうことの選択制になりますので、タイムスタンプを使用しない場合は、電子メール管理規程に正当な理由が無い訂正および削除の防止に関する規定を盛り込んで、その通り運用することになります。
さらに、その他の要件としては、関係書類の備付けや見読性、検索機能の確保等が挙げられます。詳しくは、下記の問56以降を参照してください。
※ 電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類及び電子取引関係】(平成29年6月)
取引関連メールは、電帳法の保存要件でも検索機能の確保が要求されていますが、少なくともキーワード、発信日時、送受信先アドレス等で検索できる環境が必要です。
また、一般の電子メールでも、ヘッダー情報を検索属性としてデータベース管理してメール本文を検索できることは、企業のコンプライアンス向上のためにも非常に有効な手法と考えられます。
文書情報管理システムや電子メールアーカイブシステムでは、一般的にこれらの機能は備わっていますので、やはりこれらのシステムを利用して保存・管理することが有効と思われます。
以上で、「電子メールの保存・管理について」の考察は終了しますが、次回は「電子文書の信頼性確保の考え方や留意点について」というテーマで、電子文書の信頼性向上についてさらに掘り下げたいと思います。
株式会社 ジェイ・アイ・エム
理事 甲斐荘 博司
(JIIMA法務委員会 委員長)
※2018年1月執筆時